転職活動では、やはり転職回数が多いと不利になることが多いです。しかし、理由を聞いてみると、「そういうことか。それであれば、その経験がむしろ強みになり・・・しっかりと説明すれば・・・。」という方が多くいらっしゃいます。

その場合は、じっくりとアナログで攻めていく進め方が合っています。

数打ちゃ当たるで書類を片っ端から送って、全てお断りとなってしまっては、精神衛生上良くないですから。

今回の事例のS.J氏は、かなり会社の問題で苦労してきて、転職回数が多くなってしまったこと、そして次も同じようなことになるのではないかという不安とで、非常に悩んでいらした電気制御設計技術者です。

S.J氏の簡単なプロフィール

・30歳(当時)、男性
・奥様と二人暮らし
・高専卒業してから、現在4社目(転職3回経験)
・現在の会社は1年前に入社したばかり
・技術者としての経験は装置モノや設備の電気制御(PLC&ハード)設計

1回目の転職相談

初め201x年の夏頃に転職相談を受けました。

30歳で3回の転職を経験していること、そして直近の会社は1年前に入社したばかりでしたが、最近退職したという状況で、経歴書だけでいったら書類選考を通過させるのは難しいという印象でした。

しかし、各社の退職理由を聞くと本人が原因の退職はしていないということ、また苦労人であるということ、技術的にはしっかりと経験してきていること等が分かりました。その為、しっかりと今までのエピソードなどの話を聞いてくれる企業数社に紹介先を絞って進めようということになりました。

しかし、相談に来られた時には既にハローワークを使って自分でも転職活動をしていて、選考中の企業もありました。

具体的に転職支援を進めようとなったくらいの時期に、その既に選考中だったという企業から内定をもらい、既に離職中だったということもあり、生活のための収入を得るために入社を決意しました。

このときは弊社からの紹介で進めることは出来ませんでしたが、約1年半後に・・・。

久々の連絡

初めて転職相談にいらっしゃった201x年の夏から約1年半が経った頃に「転職した先で技術者を採用したいと考えているから、技術者を紹介してもらうことは出来ますか?」という相談の連絡がありました。

今までの経緯を知っていただけに、転職先で活躍出来ていることに安心しました。

それに弊社の転職支援で転職したわけではないのに、このようにして連絡をいただいたことが、非常に嬉しかったです。

しかし、更に半年後・・・。

2回目の転職相談

そして、更に半年程経った頃(初めて出会ってからちょうど2年後)に再度連絡があり、転職の相談に乗ってほしいとの事。

一体どうしたのかと話を聞くと、今の会社は残業代未払いや社長が〇〇など(この点に関しては詳しく書けませんが、驚くべき内容でした。)の信じられない環境で、技術的には経験が積めたので約2年間頑張ってきたが、状況がだんだん酷くなってきているため、このまま続けるのは危険と思い、転職支援をお願いしたいとの話でした。

詳しく話を聞いた限りでは、S.J氏本人のためにも、そして家族のためにも転職したほうが良いと感じ、転職支援を引き受けることになりました。

まずS.J氏の経歴を振り返ってみると

  1. 高専卒業後、大手企業で6年経験したが、リーマンショックの打撃で手取り13万円となってしまった。ちょうど結婚したてで生活が厳しくなり退職。
  2. 1.の時の協力会社の人に声をかけられ入社(約100名の企業)し、2年経験。しかし、原発事故の影響で仕事がなくなり、会社都合で退職。
  3. 転職サイトで探した企業に応募して入社(約50名の企業)し、約8ヶ月経験。しかし、非常にブラックな環境(社名を見て私も知っているくらいの)で、ある日同僚が指を切断してしまった際に、救急車を呼ぼうとしたら止められるといった事件があったとのこと。そのような事件のタイミングで2.の時の社長が会社を設立するからと声をかけられ転職。
  4. 2.の時の社長が立ち上げた会社へ入社(4名の企業)。電気制御設計の仕事をして欲しいという話だったが、経営がうまくいかず、方向性が変わってしまった為、技術者としてのポジションがなくなり、退職するしかなかった。
  5. ハローワークの求人に応募して入社(9名の企業)。一人で何でもやらなければならず、客先打ち合わせから仕様検討、設計、現地立ち上げまで経験出来、技術経験的には良かったが、残業代未払いや社長が○○等、危険を感じて転職活動中。

というように2回目の転職相談時には経験者数5社(転職回数4回)となっており、1回目の時よりも転職回数的には厳しくなっていました。

しかし、現在の5社目では技術者としての経験としては非常に深く広く経験出来ていたので、その点は大きなPRポイントでもありました。

転職支援

今回の転職では間違いがあってはならないという考えを改めて共有し、じっくりとS.J氏から様々なことをヒアリング。そして私からは業界や企業の情報提供をした上で、慎重に整理していきました。

今までを振り返り、何故うまくいかなかったのか、良い部分はどのような点があったかを徹底的に二人で分析し、次の企業でそのような点を解消できること、そして次の企業に求めることは何かを確認していきました。 転職で重要なポイントとして、転職すれば全て改善されて素晴らしい環境が待っていると勘違いしがちですが、決してそのようなことはありません。抽象的な夢を見るよりも、現状のこの点は必ず改善したい、しかしこの点は妥協できる、そして次の企業にはどのようなことを求めるか等といった、現実的かつ具体的な整理が重要です。

S.J氏の今までの経歴や今後に関する考え方の整理、PRポイントを明確にした経歴書の作成、求人企業側へ誤解のないように事前の詳しい説明を行うこと等々、一つ一つを丁寧に間違いのないように進め、書類については無事に通過となりました。そして最終的に候補企業が1社に絞られ、この1社に向けて万全の準備を進めていきました。

これまでしっかりとS.J氏自身考えを整理してきた為、面接準備についてはほぼ完成している状況ではありましたが、過去の面接内容なども伝えて万全な準備を行い、面接に臨みました。ちなみにその企業は面接だけでなく専門の筆記試験もあった為、その対策も行いました。

その為、一次選考(筆記、面接)、最終面接と危なげなく通過し、無事内定、入社となりました。

S.J氏の経緯を知っていたのと、S.J氏の真剣な事前の準備などを見てきたこともあり、私もこの時ばかりは、何とも言えない喜びがありました。今振り返ってみても本当に良かったと思います。

入社後について

入社した会社は、ニッチな業界で成功している装置メーカー。社員数は約130名。

環境や仕事にも慣れてくると、もっとこうしたほうが良いのではと思うこともあるようですが、総合的には非常に満足しているとの事でした。

転職先が決まることが成功ではなく、入社してからがどうなのかということが重要ですが、S.J氏は転職成功といっても良いと思います。まだ、入社して1年と数か月ですが、これから更に活躍されていくのではないかと思います。

不利だと思えることがあっても(そのようなことは誰でも持っているものだと思います)、あきらめたりネガティブになったりせずに、前を向いて進んでいけば必ず道は拓けます。