転職ではこれまでの経歴で培ってきた知識や技術を判断されますが、技術者/エンジニアとしてのスキルの評価材料のひとつとして資格があります。組み込みエンジニアへの転職を考えている場合は、どのような資格を持っていれば企業にアピールができるのでしょうか。組み込みソフト系に転職を考えている方のために、ここでは組み込みエンジニアとして転職に有利なソフト系の資格をご紹介します。

ETEC(組込み技術者試験制度)

ETEC

ETECとは、一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)が実施してる組込み技術者向け試験制度です。ETECは認定試験ではないため、合格・不合格がありません。結果はグレードCからグレードAの等級で判定されます。

試験には「組込みソフトウェア技術者試験クラス2(エントリレベル)」と「組込みソフトウェア技術者試験クラス1(ミドルレベル)」の2種類があります。

エントリレベル

組込みソフトウェア開発に関する知識が一定以上あることを判定します。大学などで組込みソフトウェア教育を受けている学生や、プログラミング経験なく入社して、社内で組込みソフトウェアの教育を受けたプログラマなど、エントリレベルの技術者が修得が必要とされる知識が出題されます。

出題される分野は、技術要素、開発技術、管理技術、通信になります。問題数は120問で制限時間は90分、選択式で出題されます。800点満点で採点され、評価はグレードと出題分野ごとの正答率をパーセンテージが通知されます。

ミドルレベル

ETEC組込みソフトウェア技術者試験クラス2で「500点」以上のスコアを取得した人が申し込める試験です。JASAのサイトで公開されている評価内容には「要求、設計工程、それに対応するテスト工程における知識から分析能力までの総合力」、「現場リーダとして不可欠な、実装、QCD等の知識・能力」、「実装の実務能力」をテストするとあります。問題数は90問で制限時間は120分です。

ETECは組込み技術の基本的な知識を判定する試験です。組込み合否はないといっても、転職のアピール材料にしたいのならミドルレベルの上位ランクを目指しましょう。

一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)のホームページ

エンベデッドシステムスペシャリスト試験

Raspeberry Pi

エンベデッドシステムスペシャリスト試験は、組込みシステム開発基盤の構築や組込みシステムの設計・構築・製造を主導的に行うエンジニアを対象とした資格試験で、情報処理推進機構(IPA)が実施しています。

試験で求められることは、機能、性能、品質、信頼性、セキュリティといった製品に要求されることを、ハードウェアの課題とソフトウェアの課題に適切に分類し、最適な組込みシステムを構築するための知識と能力です。

具体的には、「機能仕様通りのハードウェアとソフトウェアの組合せを行い、組込みシステム開発の工程を主導的に実施できるか」、「各開発分野の専門家から技術に関する知識を得て、専門的な知識と開発経験を組込みシステム開発の工程に反映できるか」、「組込みシステム開発を遂行する上で効果的な開発環境を整備して改善ができるか」という点を問われます。

試験は午前と午後合わせて4回に分けて行われ、午前は選択式の問題、午後は記述式の問題が出題されます。平成29年度の試験実績は、受験者数4,590名に対して合格率が17.9%となっています。

資格を取得すれば、開発現場で主導的な役割を果たせるエンジニアと認められるので、転職に大いに役立ちます。

IPA 独立行政法人 情報処理推進機構のホームページ

OCRES(OMG認定組込み技術者資格試験)

OMG認定組込み技術者資格

OCRESは、組込みソフトウェア開発に関わる全ての人を対象としており、特にUML(ソフトウェアを形式化するための統一されたモデリング言語)に関する知識を問われる資格試験になっています。試験を実施しているのはUML教育研究所という民間企業ですが、130ヶ国以上の国で共通の認定基準として通用します。

OCRESは下位レベルから順に「OCUPファンダメンタル」、「OCRESインターメディエイト」、「OCRESアドバンスト」の3段階のレベルがあります。上位レベルの試験に合格しても資格として認定されるには、下位レベルの試験に合格する必要があります。たとえば、先にインターメディエイトに合格しても資格として認められるには、ファンダメンタルの試験に合格する必要があります。各試験の内容は以下の通りです。

ファンダメンタル

OMG認定UML技術者資格試験「ファンダメンタル」ロゴマーク

UMLの用語や基本的なダイアグラムに関する知識やモデルの意味を理解する能力を認定します。合格ラインは80問中46問以上の正答となります。

インターメディエイト

OMG認定組込み技術者資格試験「インターメディエイト」ロゴマーク

MDA(モデル駆動型アーキテクチャ)の知識とCORBAを中心とした組込み技術の知識と理解能力を認定します。合格ラインは90問のうち40問以上の正答が必要です。

アドバンスト

OMG認定組込み技術者資格試験「アドバンスト」ロゴマーク

MDAの変形やリアルタイムCORBA、組込みCORBAなどの応用技術の知識と理解力を認定します。 合格ラインは90問中、正答が45問以上です。

UMLはシステムの構成の全体像をつかむのに役立ちます。そういう点で、ハードウェアとソフトウェアが混在してシステム構造が複雑化する組込みソフトの現場でも、UMLの技能を認められた人材は重宝されます。また、OCRESは世界基準の資格なので、認定されれば世界で通用するエンジニアであるということが認められます。

自分に合った資格を取得しよう

本の上にペンと虫眼鏡

ここまで、転職に有利な組み込みソフト系の資格を3つ紹介してきました。資格は転職でのアピール材料になりますが、むやみやたらに取得すればいいというものでもありません。まだ経験の浅い技術者なら、まずはETECを受けて自分のレベルを確認するのもいいでしょう。自分が転職を目指す職場ではどんな資格が有利に働くか、自分の現在のレベルにあった資格はどれかを知ることが大切です。