転職相談を受けていると、「何か資格を取っておこうと思うのですが、転職で有利になる資格はありますかね?」という質問をいただくことがあります。

結論から申し上げますと、転職の場合、基本的には資格よりも実務経験(何が出来るのか)のほうが、重要になります。ただし、場合によってはプラスに働くこともありますし、資格によってはインパクトを与えることができるものもあります。

早速、資格別にご紹介していきたいと思います。

CAD利用技術者試験

3D-CADの図面

一般社団法人コンピュータ教育振興協会が実施する民間の認定資格です。2次元CAD利用技術者試験(基礎、2級、1級)、3次元CAD利用技術者試験(2級、準1級、1級)に分かれています。

機械工学の知識を問われるものではなく、あくまでもCADの操作についての認定資格です。機械設計者ではなく、トレーサー、CADオペレーター、モデラ―、機械設計補助といった職種向けです。

2次元CAD利用技術者試験(基礎、2級、1級)

2次元CADに特化した試験です。基礎、2級、1級と3段階あります。

基礎

これからCADを学ぶという方向けです。内容としては下記です。 図形、製図、CAD、ネットワークの基礎知識、CADを動かすパソコンについて、情報セキュリティと知的財産について

2級

基礎の分野から更に一歩踏み込んだ内容に加えて、CAD運用・管理と課題、3次元CADの基礎知識も含まれます。

1級

筆記試験に加えて実技試験もあります。また、機械分野、建築分野、トレース分野の3分野に分かれています。基礎、2級とは違い、受験資格があります。2級合格者または過去の1級合格者でないと受験できません。

3次元CAD利用技術者試験(2級、準1級、1級)

3次元CADの試験ですが2次元図面からのパーツモデル作成能力も問われます。2級、準1級、1級と3段階あります。

2級

受験資格はありません。筆記試験のみで、内容としては下記です。 3次元CADの概念、3次元CADの機能と実用的モデリング手法、3次元CADデータの管理と周辺知識、3次元CADデータの活用

準1級

受験資格として2級に合格している必要がありますが、2級と併願受験も可能となっています。内容としては、実技試験のみで、3次元CADを使用してパーツのみモデリングし、そのモデルの体積、表面積などを測定します。その結果を選択肢の中からもっとも近い値を選択し、マークシートに記入するという内容です。

1級

受験資格として2級または準1級に合格している必要がありますが、併願受験も可能となっています。内容は、準1級の内容に加えて、パーツだけでなく、アセンブリも含まれます。

一般社団法人日本コンピュータ教育振興協会

機械・プラント製図技能検定

ボルトの手書き図面

厚生労働省の外郭団体である「中央職業能力開発協会(JAVADA)」が実施する技能検定です。機械製図手書き作業(1級~3級)、機械製図CAD作業(1級~3級)、プラント配管製図作業(1級~2級)の3分野に分かれています。CAD利用技術者試験に比べ、材料力学など機械工学の知識が部分的に必要になります。

機械製図手書き作業(3級~1級)

産業機械の部品図、組立図を対象とした手書き製図の検定で、機械製図作成に必要な技能、知識が問われます。知識としては下記の基礎が必要になります。 製図一般、材料、材料力学一般、溶接一般、力学、液体、熱、電気など

3級

複雑な構造のものはなく、簡単な構造のもののみ。

2級

複雑な構造の産業機械の部品図作成、組立図作成に加えて、強度計算、性能計算も行います。

1級

2級の内容に加えて、一部を変更するといった類似設計などを含んだレベル。

機械製図CAD作業(3級~1級)

機械製図を手書きではなくCADで行うものです。内容的には機械製図手書き作業(3級~1級)と同様です。

プラント配管製図作業(2級~1級)

化学工場などのプラント施設の配管製図に必要な技能、知識が問われます。知識としては機械製図と同様です。1級は配管サポートの簡単な強度計算と、配管サポート図の作成を含んだレベル。2級はそれらを含まないレベル。

中央職業能力開発協会(JAVADA)

機械設計技術者試験

モーターの3D図面

前述の2資格よりも、より専門的で難関になります。一般社団法人日本機械設計工業会が実施する民間の認定資格です。

3級から1級まで3段階あります。3級のみ誰でも受験できますので、設計未経験から機械設計職を目指したいということであれば、3級から勉強を進めてみることをおススメします。

3級

マークシート方式の筆記試験で、問われる内容としては機械工学基礎となります。具体的には、下記科目です。 機構学・機械要素設計、機械力学、制御工学、工業材料、材料力学、流体・熱工学、工作法、機械製図

2級

受験資格として実務経験年数が必要になります。学歴や3級に合格しているかどうかで変わりますが、受験資格として2年~7年の実務経験が必要です。マークシート方式と記述式の筆記試験で、問われる内容は下記です。 機械工学基礎(機構学、機械要素、材料力学、機械力学、流体工学、熱工学、制御工学、工業材料、工作法、機械製図)、機械工学基礎の設計への応用・総合、環境・安全の知識

1級

2級合格者は次年度からすぐに受験できますが、それ以外は実務経験5~10年が必要と、かなり厳しいものになっています。全て記述式問題(実技課題含む)で、さらに小論文(1200~1600字程度)もあります。問われる内容は下記です。 機械設計に関わる管理・情報等に対する知識、機械設計の基本となる計算課題を含む知識、機械設計の管理者として必要な環境・安全に対する知識 一般社団法人日本機械設計工業会(JMDIA)

技術士(機械部門)

5人のビジネスマンのシルエット

公益社団法人日本技術士会が実施する国家資格です。

技術者にとって最高峰の資格と言っても良いと思います。技術士は、機械部門を含め、21部門あります。難易度が高いことは言うまでもありませんが、技術士になるには少々面倒です。

まず、一次試験に合格するか、指定された教育課程(大学やその他教育機関、日本技術者教育認定機構(JABEE)の認定コース等)を修了すると、技術士補になれます。

その後、4年~10年の実務経験を積んだ後、二次試験に合格し、登録すると技術士になれます。

正直かなり大変ですが、苦労しただけの価値はあると思います。

公益社団法人日本技術士会

転職で有利になる資格は?

クラウチングスタート

冒頭でも述べましたが、資格を持っているというだけでは、有利にはなりません。司法試験や弁理士、不動産鑑定士などの独占資格であれば、持っていることに価値がありますが、技術者の場合は違います。何が出来るかが重要です。

では、資格を取っても意味がないかというと、そうではありません。

今回ご紹介した機械系の資格はどれも勉強して覚えた知識を、実務に活かすことが出来ます。受験しようがしまいが、資格の勉強をすることに大きな意味があります。特に未経験から機械設計職を目指したいという方であれば、自ら興味をもって積極的に機械系の資格の勉強をしているということはPRになります。

履歴書や職務経歴書上では、資格が記載してあったほうが、プラスになりますが、面接時であれば、資格に合格していなくても、勉強した内容の知識を使って、少しは技術的な会話が出来るはずです。そのようなことからポテンシャル採用として考えてもらえる可能性がぐっと上がります。

CADオペレーターを考えているのであれば、CAD利用技術者試験の勉強をしてみると良いと思いますが、機械設計者を目指すのであれば、機械・プラント製図技能検定か、機械設計技術者試験の勉強をおススメします。

機械設計実務経験者の方は、自分の実力の確認として、各種試験を受けてみて、合格すれば経歴書に資格として書けるというおまけがついてくるという考えも良いのではないかと思います。

資格に頼るのではなく、資格をうまく活用するというスタンスが大切です。