就職・転職活動や、キャリアコンサルティングの中で、職業適性を見るテスト・検査というものがあります。実際に、採用選考の中でも、適性試験という形で実施される事もあります。今日は、その適性検査に関する事例について考えてみたいと思います。

対人適性に関する事

適性検査では、様々な角度から分析がなされ、その人の性格や特徴から、適性を分析します。特に、職業適性を考える場合には、個人の特性と職種による適性をマッチングさせる、という考え方です。その職業適性を考える際に、一番注目されやすいのが、【対人適性】ではないでしょうか。

対人適性が求められる職業とは?

対人適性・スキルが求められる職業と言えば、適性検査の分野ではよく【対人サービス職】と分類されます。代表的な職種としては、接客業(飲食、ホテル、旅行、ブライダルなど)、営業(無形、有形、法人、個人など)、教育(教師、講師、インストラクター)、その他(医者やカウンセラーなど)、というように、お客様を直接相手にする職業全般が当てはまります。

対人適性が求められない職業とは??

幾つかの適性検査について調べたところ、それぞれで【対人適性が求められない職業】(対人が苦手な人に適した職種)という内容を見ていくと、まず『対人関係が必要になり、特に気配り・感情の交流が求められる仕事には向いていない』という前提が書かれます。そして、向いている職種に関しては、【技術職・専門職・企画分析・クリエイティブ・研究職・…】というように記載がありました。

本当に対人適性が求められないのか??

少し大袈裟な表現かもしれませんが、対人適性が低いと判断された方に、適した職種を提案するにはしっかりと考えなくてはならない事です。正直に言って、前項のような適性検査での分析、分類は、理論的には正しいと思います。しかし、現実問題はもう少し複雑な要素が絡んできますよね。

ある技術者の方の事例

つい最近の事ですが、ある技術者の方から相談がありました。この内容は、まさに現実問題が絡むと非常に複雑だと感じられる内容でした。そして、私自身がモヤモヤする展開になってしまいました・・・。

なかなか仕事が続かないので、適性検査を受けてきました

この技術者の方は、なかなかお仕事が続かないという悩みを抱えていました。何度も転職しても、上手くいかず、今回も解雇に近い形で退職されてしまったそうです。そこで、公的職業相談機関へ行ったところ、職業適性検査を受けさせてくれたそうです。結果は、【対人適性が低く、営業や接客を伴う仕事は向いていない】という事だったそうです。

技術職を辞めて、接客を伴う仕事も視野に入れていた

実はこの方、技術職で何度か上手くいかなかった事、そして就職活動が難航してる事もあり、受けられる求人の中から、技術職以外にも幾つかの職種に興味を持っていました。そのうちの1つが、接客を伴う職種でした。そこで、適性検査結果を説明してくださる方に、受けようとしている職種について説明したところ、『あなたはその職種に向いていません。あなたは技術職に向いています。』と言われたそうです。

適性検査結果を聞いた後の反応とは?

適性検査結果を聞いたご本人の反応は、『やっぱり技術者に向いているんだ』という、安心と、どこかしら嬉しそうな反応でした。技術の仕事が本当に好きなんだろうなと改めて感じました。適性検査はハッキリした結果が出るので、ある意味でこの方には良かったようです。

しかし…その結果で本当に良いのでしょうか!?

適性検査の結果は、理論に基づいた内容だと思います。説明した方も、理論に基づいた正しい説明をされたと思います。ですが、あれ??この方は今まで技術職で働いてきて、お仕事が続かないというのがお悩みでしたよね?この結論だけで本当に良いのかな・・・

なぜ、お仕事が続かなかったのか?

私がカウンセリングした限りでは、確かにこの方は技術職に適性はあると感じました。そして、お仕事が続かなかったのは、この適性の為ではないと分析しました。しかし、ここで前述の【現実問題が絡むと非常に複雑】という要素が現れます。

技術職には対人業務はないのか?

意地悪な言い方はしたくないので、最初に断っておきますが、対人業務がゼロという仕事は世の中にほぼ無いでしょうし、適性検査や、それに基づいたアドバイスをされる方々も、承知の上の内容です。ですが、現実問題では、この方は技術職として働く中での、対人適性が上手くいかなかった、というのがお仕事が続かなかった1番の理由だと感じました。そして、この事は今回に限らず割とある事例ですし、『技術職は対人・コミュニケーションが苦手でも大丈夫』という理屈の落とし穴なのです。

では、どうすればお仕事が続くのか!?

この方の場合、適性を考えるのであれば、職種だけでなく、職場環境も含めて考える事が必要となるでしょう。例えば、会社の規模、組織内での各部署の繋がり方、業務の進め方、上司になる方のタイプ、という風に、我々キャリアコンサルタントから見ても、会社の外からはマッチングするのは容易ではありませんが、そこまで考えないと、適性を考えたとは言えないかもしれません。

もちろん、本人の努力も必要です!!

適性となると、外的要因を考えがちですが、最終的に大事なのはご本人です。誰だって苦手な事はありますし、仕事をする上で避けて通れません。対人適性が低いのであれば、人一倍そこに気を使い、努力すべきでしょう。そして、自身の得意分野で成果を上げていけば、周りから認められる事でしょう。

極端なアドバイスもあります

対人適性が低いのであれば、個人で仕事をしてみては?というアドバイスもあります。技術職の場合、手に職があれば個人で仕事も出来ますし、そういった個人事業主が集まるコミュニティもあります。多くの個人技術者は、営業が苦手で仕事を取ってこれないという問題がありますが、それを解決するコミュニティもアウトソースも無くはありません。思い切って職人として極めるのも1つの選択肢です。

実は、モヤモヤしたポイントがありました

この話を事例として書いた理由の1つに、適性検査後の説明とアドバイスに違和感があったというのがあります。実は、前述のように、ご本人は技術職以外にも興味を示していて、具体的に応募も考えていた職種がありました。実はこの職種、サービス業ではなるのですが、個人で行うお仕事なのです。つまり、この方の適性を踏まえると、職場内での対人適性を殆ど求められず、お客様も個人か数人、という事を考えると、かなり努力で解決出来そうですし、何よりご本人が興味を持って選んだという意志を尊重し、その感覚もズレていないと、私自身も関心しました。しかし、その相談した公的機関の方は、『あなたには向いていない!』と言い切った訳ですよね。色々と意図はあったのでしょうが・・・。まだモヤモヤしています・・・。